【PTL2022 日本人唯一のチームの記録】DAY2
眠いながらも、出発すると快調で、どんどん進むことができた。朝日がさしてきた山間の村を抜け登山にさしかかる。いくつかのチームと合流したり離れたり、自分たちの自由なペースで旅が進む。
比較的低い山を歩くので、緑が多く気持ちいい。広い沢に出て両側に大きな岩肌が見えるようになる。以前の大会でも通った道だが、牛がいたり牧草地が広がったりとのんびりした光景だ。ただ、それでも標高はずんずん高くなり最終的には標高が2,500mにもなる。
col d’encla という鞍部は、PTL2019でも通り非常に苦しめられた場所。そこを通過し、いくつもの尾根と沢を超え、最後は垂直に400mぐらい登り岩山の中腹にある山小屋へ到着。後から気づいたのだが、ここは、Robert Blanc という山小屋でPTL2018で土砂降りの夜にひどい思いをしながら到着し宿泊した山小屋だった。今回は、サンサンとした太陽の下、たくさん汗を書きながら苦労して到着。僕とチームメイトは、りんごジュースを購入、ずっと、甘い補給食ばかりを食べてきたので酸味が非常においしかった。後から来た韓国人チームは、たっぷりと昼食を採って、ビールまで飲んでいた。レース中にここまで余裕があるのは羨ましい。
山小屋を後にして、次のチェックポイントを目指す。ここから氷河の下を通るため、雪解け水が非常に多く流れている。そのうちの一つでは、ロープが張ってあり、わざと水に濡れさせるアトラクションもあった。PTLでは、このようにちょっとした山遊びを楽しめる箇所をいくつか設けてある。しかし、川渡りでは、足が濡れてしまう。これは、ランナーにとって致命傷。足の裏が濡れると豆ができやすくなり、非常に都合が悪い。レースでは、如何に足の裏を乾燥させておくかに気を使うぐらいなのだが、ここまで濡らされるとどうしようもない。時々、靴を抜いて乾かしながら進むことにした。小さな(といっても、普段の感覚からすると非常に大きいのだが)尾根と沢をいくつも横切り、
Col de Seigos という鞍部に到着。ここも、PTL2019で通っており、非常によく覚えている。遠くまで眺望が良く、沢のへりを進み尾根に乗り換えるルートとなる。今回は、この尾根から非常に険しい岩場を進むルートだった。本当に小さな足場が岩肌に打ち込んであり、その上に鎖が渡してある。鎖を手でつかみ、足場に足を載せ替えながら進むことになる。足場の下は、何もなく、足を踏み外し滑落すると、どこまでも下に落ちていくルートである。今回のレースで一番恐怖を感じたコースだった。昼間に通ったので良かったが、夜は恐ろしくて絶対に通れないと思った。非常に怖い思いをして、この難所を抜け、きれいな湖の脇を通る。この後から、道が怪しくなる。(この辺りは、当然ながら余裕がなく、写真など撮れない)
配布される髪の地図には、ルートの状況に合わせて色分けがされている。通常のわかりやすい道は赤色、道がわかりにくいルートは黄色でひょうじされている。この区間は、GPSデータを見ながら注意深く進む必要があり道を間違えやすい。逆に言うと、それほど正確に道を辿らなくても進める区間でありおおよその位置さえあっていれば、歩きやすい場所を通れば良いことになる。地図のルート上で黒色は、歩きにくいDifficultルートで、危険を伴うことがあるので、注意が必要である。
道のないガレ場を延々と歩かされるルートとなっており、非常にルートを探すのが難しかった。GPSデータでは道が存在するかどうかはわからないので、とにかくおおよその位置を把握して歩きやすい場所を進むことにした。いくつかのチームと協力して山を登ったところで日没。周囲が見えないとどこを進めばよいかわかりにくく、かつ、足場が崩れやすかったので、本当に苦労した。Mont Quille という岩山で3,000mの標高があり、明るければ遠くまで見渡せそうだが、夜中では、選手の明かりが点々と光っているだけだった。
わからないなりに進んでいくと、ここだけコースマークがあることがわかり、それをたどることで、なんとかわかりやすい場所まで到達。そこからも地図上では、道のないルートであり、GPSのルートを頼りに進むことになる。比較的傾斜のゆるい牧草地を下ることになり、草が生えているのでとても滑りやすく、何度も転んだ。途中から道が出てきて、Plan Veyle という場所に出た。牛舎の横にあるはずの道がわからず苦労したが、そこはスキップして先に進むことにした。ちなみに、すでにフランスからイタリアに入っていた。
PTLは、フランス、イタリア、スイスの3カ国を回る大会であり、それぞれの国が管理する地図をつなぎ合わせてルート地図を作成する。これらの地図は、それぞれのお国柄が出ているようで面白い。フランスは、イメージに訴えかけるような、まるで絵画のような表現で地図がかかれている。イタリアは、簡素で最低限の情報で、如何にもイタリアっぽい。スイスは、精密さがウリであるようにきっちりと書かれていて、非常に精度が高く見える。
今日の目的地である Hospice du petit Saint Bernard という場所は、インフォメーションとして使われていると思われる建物である。その手前には、特徴的なLac Verneyという湖があり、その周囲を廻るように山小屋にたどり着く。すでに多くの選手が到着して賑わっていた。先に夕食を食べることにした。地元産の鶏肉入りのパスタと野菜スープ、ジュース、バゲットが夕食だった。鶏肉パスタはさっぱりしていて美味しかった。その後、ベットで寝たが、やはり睡眠時間は1時間と言われた。